石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

かなしきは
喉のかわきをこらへつつ
夜寒(よざむ)の夜具にちぢこまる時

<私が考えた歌の意味>
悲しい。
喉の渇いたのをこらえながら、布団の中で縮こまっている。
夜寒には、それが悲しい。

<私の想像を加えた歌の意味>
喉が渇いても水を飲みに起きる気にもなれない。
寒い夜なのに、金もなければ、石炭もない。
家中、冷え切っている。
薄い布団の中で、体を縮めているしかない。
まるで、今の境遇そのものだ。
寒く、悲しい。

<歌の感想>
 悲しさがダイレクトに表現されている。寒さをしのぐ燃料も金も仕事もない惨めさが描かれている。貧しいことがどれほど惨めか。そして惨めな状態から脱出できないことがどんなに悲しいか。生活に密着した悲しさを感じる。
 気になるのは、空腹ではなく「喉の渇き」であることだ。ここに、現実の貧しさだけでなく、精神的なものも込められているのであろう。