石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

新しきインクのにほひ
栓(せん)抜けば
餓ゑたる腹に沁むがかなしも

<私が考えた歌の意味>
新しいインクの瓶の栓を抜いた。
インクのにおいが、空きっ腹に沁みて悲しい。

<私の想像を加えた歌の意味>
満足に飯を食うだけの金もない。
インクは買わないわけにいかない。
新しいインクの瓶の栓を開ける。
気分をよくしてくれるインクのにおいなのに、今日は、飢えた腹にしみる。
なんでこんなにも貧乏なんだ。

<歌の感想>
 机の上にあるような物を題材にしているのが珍しい。収入のない状態に長く追い込まれている。インクを買うか、食べ物を買うか、迷った末の作者を感じる。