万葉集のかたわらにキーボード

記事は、原文に忠実な現代語訳や学問的な解釈ではありません。私なりにとらえた歌の意味や、歌から思い浮かぶことを書いています。

カテゴリ: 歌集『一握の砂』の感想

 『一握の砂』の冒頭の短歌は、有名だ。①東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる 啄木がどのように短歌を作ったかはわからないが、①は、相当に工夫を重ねた作だと思う。また、読む人を意識した短歌だと思う。 次の短歌②は、作歌の時期や動機、また心情に①…
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①たはむれに母を背負ひてそのあまり軽(かろ)きに泣きて三歩あゆまず②親と子とはなればなれの心もて静かに対(むか)ふ気まづきや何(な)ぞ 親子の関係は、時代の思潮に影響を受ける。だが、いつの時代も子の年齢が高くなれば、子が幼児の時のような一体感はなくなる。…
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①東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる②いたく錆びしピストル出でぬ砂山の砂を指もて掘りてありしに この二首は、同じ場所同じ時期の作だと思う。 ①は、推敲を加え工夫もされていると感じるし、歌の調子が際立って美しい。②は、作者の行為がそのまま短歌…
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 『一握の砂』は、次の五章に分かれている。「我を愛する歌」「煙」「秋風のこころよさに」「忘れがたき人々」「手套を脱ぐ時」 この五章の内の「我を愛する歌」を読み終えた。今までは、『一握の砂』の有名な数首を知っているだけだった。一つ目の章だけでも、全部の短歌…
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A    東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむるB    大海にむかひて一人七八日泣きなむとすと家を出でにきC    わが泣くを少女等きかば病犬の月に吠ゆるに似たりといふらむD    ただひとり泣かまほしさに来て寝たる宿屋の夜具のこころよきかな 「…
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 次の二首を比べると、作者の心の状態の違いが見えてくる。まれにあるこの平なる心には時計の鳴るもおもしろく聴く死ね死ねと己を怒りもだしたる心の底の暗きむなしさ 一首目からは、穏やかではあるが、生き生きと日常の事柄を受け止めている気分が伝わってくる。二首目は…
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 私にもごく似たような経験がある。鏡屋の前に来てふと驚きぬみすぼらしげに歩(あゆ)むものかも ただし、私の場合はかなり年を取ってからだ。 啄木の年齢を考えると、不思議な気もする。啄木の場合は、中年や老年になった自分に驚くというのとは異なる感覚なのだ。 啄…
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