石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

飄然と家を出でては 
飄然と帰りし癖よ
友はわらへど

<口語訳>
誰にも何も言わずにふらりと家を出る。
いつ帰るとも知らせず、どこへ行ったかも言わずふらりと家へ戻る。
友人は、私がそんなことをたびたびするのを笑っている。

<意訳>
飄然と家を出ては、飄然と家へ帰る。
友はそんな私の癖を、ばかにして笑っている。
友は笑っているが、誰もそのときの私の気持ちをわかりはしない。