石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

大といふ字を百あまり
砂に書き
死ぬことをやめて帰り来れり

<口語訳>
砂の上に「大」という字をいくつもいくつも書いてみた。
死のうという気持ちが消えてしまい、海岸を後にした。

<意訳>
この気持ちをどうすることもできず、また海岸に来た。
死にたいという思いばかりが心を占領している。
ただなんということもなく、「大」と砂の上に書いてみた。
なんということもなく、もう一つ書いてみた。
もっと、もっと続けて、「大」と書いてみた。
もう少し生きてみようかという思いがわいてきたらしい。