802 山上憶良

瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ
うりはめば こどもおもおゆ くりはめば ましてしぬわゆ

いづくより 来たりしものそ まなかひに もとなかかりて
いずくより きたりしものそ まなかいに もとなかかりて

安眠しなさぬ
やすいしなさぬ

<口語訳>
瓜を食べると子どもを思い出す。
栗を食べるとまたいっそう子どもを思い出す。
どこからあらわれるのか、目の前に子どもの姿が見え隠れして、眠りさえも妨げられる。

<意訳>
瓜を食べると、これを子どもにも食べさせたいと思う。
栗を食べると、これを子どもに食べさせたらさぞかし喜ぶだろうと思う。
何かの拍子に子どもの姿がありありと目に浮かぶ。
離れている我が子の姿が思い浮かぶと、会いたくて、安眠もできないほどだ。


 序詞を読み長歌を読むと、純粋に我が子への愛情を表現しているだけとは受け取れない。歌の後半には、観念的なものを感じる。我が子への感情だけではなく、子どもを愛おしく思うのは大切にすべき心情だと周囲を諭している意図を感じる。