巻五 797

大野山 霞立ちわたる 我が嘆く おきその風に 霧立ちわたる
おおのやま かすみたちわたる わがなげく おきそのかぜに きりたちわたる


<口語訳>
新日本古典文学大系 萬葉集一 岩波書店 より引用
大野山に霧が一面に立ちこめる。私が嘆くため息の風によって霧が立ちこめる。

<意訳>
亡き妻のことを思いため息ばかり出る。
悲しい気持ちのまま、ふと大野山を見ると、霧が立ちこめている。
霧となって山を覆うほどに、私の嘆きのため息は尽きることがない。

 ひたすらな嘆きを描いているのだが、遠景の山の霧を見ることによって、日常の生活を取り戻しつつあるようにも感じられる。