石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

ひと夜さに嵐来たりて築きたる
この砂山は
何の墓ぞも

<口語訳>
一夜の嵐が築いたこの砂山は、いったい何の墓なのか。

<意訳>
一夜の嵐で砂山が築かれていた。
砂山が墓に見える。
この砂山は、いったい何の墓なのか。


 愛する人を亡くし、その悲しみに耐えきれなくて、毎夜一人で海辺に来ている。だが、啄木はそのことを直接は表現しない。
 直接に表現しないだけに、感覚をそのまま感じることができる。砂山を、亡き子の墓と感じてはいないのだろう。その砂山は、啄木にとって「何の墓ぞも」なのだ。