『一握の砂』 「我を愛する歌」  

東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる

<口語訳>
東海の小島の磯の白い砂浜に来た。
誰もいないこの浜辺に独りいる。
涙が流れる。
涙を拭うこともせず、蟹と遊ぶ。

<意訳>
この白い砂浜には誰もいない。私だけだ。
磯の陰から蟹が出てきた。
その蟹に触ると、蟹は驚いたように動く。
私の涙は止まらない。
独りでただ泣くことしか今の私には残されていない。
蟹とたわむれながら、悲しみに深く沈んでいく。


 「たはむる」が悲しみを増幅する。
 大人であっても、磯の蟹の動きを見つめ、その蟹に触るのはおもしろいものだ。その楽しい行為と、慰められることのない深い悲しみが同居している。おもしろく楽しい遊びが、悲しみを増幅していると感じる。