みだれ髪 蓮の花船 与謝野晶子


鶯に朝寒からぬ京の山おち椿ふむ人むつまじき

<私の想像を加えた歌の意味>
鶯の鳴き声が京の山に聞こえている。
早朝の山なのに寒さはなく、春の朝だ。
椿の花が散った山路が続く。その散った椿を踏み二人連れが歩いてくる。
二人は夫婦だろうか、恋人だろうか、仲睦まじく連れ添っている。

<歌の感想>
 当然といえば当然だが、万葉集や西行の鶯の歌とくらべると新しい感覚だ。どこが新しいとは私にはまだわからない。
 与謝野晶子の短歌では、「おち椿ふむ人」のことを見ているのだが、その情景を描いているだけではない。その二人を見て「むつまじき」と感じている作者の存在がはっきりと伝わってくる。このような作者個人の感覚こそが作品の中心であるところに、万葉集の歌との違いを感じる。
 一方で、鶯の鳴き声がもたらす季節感は、万葉集とも西行とも明確につながっていると感じる。