山家集 27 7007

すみける谷に、鶯の聲せずなりければ

古巣うとく 谷の鶯 なりければ 我やかはりて なかんとすらん

<口語訳>
谷の鶯が古巣に戻ることがなくなったら、この谷では鶯の声が聞こえなくなるだろう。
そうなったら私が鶯に代って泣くようになるだろう。

<意訳>
私が住んでいる谷で盛んに鳴いている鶯ももうすぐ古巣をあとにするだろう。
鶯が古巣へ戻らなくなったら、鶯の鳴き声に代わって、私が泣き声をあげることにしよう。
鶯のいる今はよいが、そのうち鶯もいなくなると、この谷も寂しいものになるだろうから。


 西行の庵では、鶯の鳴き声が盛んだった。その鳴き声もだんだんに間遠になってきた。花の時期にたとえれば、花の満開が終わり、散り始めるころと似た感じを表現していると感じる。
 同時に、自分の庵を訪れる人も減ってきたことを表現しているようにも感じる。「我やかはりてなかんとすらん」にはそれを思わせるものがある。