巻五 841

鶯の 聲聞くなべに 梅の花 吾家の園に 咲きて散る見ゆ


<口語訳>
鶯の鳴く声を聞きながら、我が庭に梅の花が咲いて散っていくのを見る。

<意訳>
鶯の鳴き声の聞こえる春。
我が家の庭に、梅の花が咲き、そして、散っていく。
鶯を聞き、梅を眺めて春の日を過ごす。


 現代から見ると、しごく当たり前で、ただ説明をしているだけの短歌だ。それだけに、単純で、春の代表的な風物を並べて描いている。こういう作品によって、春を表す題材が普遍化していくのかもしれない。
 どこにも特徴がないようでいながら、たっぷりと春を味わっている情感が伝わってくる。