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梅の花 散らまく惜しみ わが園の 竹の林に  鶯鳴くも

<口語訳>
梅の花が散るのを惜しんで、私の庭園の竹の林で鶯が鳴いている。

<意訳>
もう梅の花が散っていく。
咲くのを待ちわびていた梅の花が。
私の庭の竹の林から鶯の鳴き声が聞こえてくる。
鶯のこの鳴き声は、梅の花の終わりを惜しむものだ。


 「梅花の歌三十二首」の中にある。近現代であれば、歌会のような雰囲気なのだろうか。それよりは、宴会の余興のようなものか。余興と言っても、目的は短歌を作り、それを披露しあうことであったようだ。
 この時代にも、梅の花と鶯は、ありきたりの題材であり、鶯を擬人化する手法も目新しいものでなかったと思われる。それだけに、いかに題材を組み合わせ、無理なくまとめ上げるかに、工夫を凝らしたのであろう。
 題材と発想は、月並みである。だが、題材と発想が平凡であっても、毎年毎年多くの人々の関心を引き、そこに感動を覚える自然の営みであり、何度表現しても味わい深いものであると思う。

 梅の花が散る、鶯の鳴き声、竹の林、西行の歌(山家集 26)との共通項は多い。