山家集 26   7006

鶯の 春さめざめと なきゐたる 竹のしづくや なみだなるらん

<口語訳>
鶯が春雨の中でさめざめと鳴いている。
春雨に濡れる竹の滴は、鶯の涙であろう。

<意訳>
春雨が滴となって竹を濡らしている。
鶯の鳴き声が、春雨の中で、聞こえてくる。
この竹の滴は、鶯がさめざめと泣くその涙と思えてならない。


 竹から落ちる滴、竹の表面につく滴、その滴のことだけを表現しているのではない。もちろん、滴を鶯の涙と信じているのでもない。
 春雨の「さめ」と、「さめざめと」の「さめ」、鶯が「鳴く」と、「泣く」の連想を楽しんでいることもあるが、それだけが目的の和歌でもない。
 聴覚と視覚、さらに竹の滴を鶯の涙に見立てた空想、なかなかに複雑な構成だ。音も景色も感じられ、それらが空想的な色合いを帯びていておもしろい。