山家集 3 6981

春立つと おもひもあへぬ 朝出に いつしか霞む 音羽山哉

まだ春が来るとは思っていなかった。
朝出かけて山の方を見ると、音羽山に霞が立っている。
春が来た、と感じた。


 自分の家の周りには、春を告げるような景色を見いだせない。でも、暦は春になっている。
 朝に行く所があって、出かける道すがら遠くの山を見る。遠くの音羽山の風景がなんとはなしに春めいて見える。その景色に春の到来を感じ取った、といった気分だろう。
 山が霞んで見える、遠くに春霞が見える、などというのは見る人によって異なる曖昧な現象であろう。その曖昧さ、わずかな変化を表現しているのが、おもしろい。