山家集 2(底本の歌の通し番号)  6980(続国歌大観番号) 
※本文は、日本古典文学大系 山家集 金槐和歌集 岩波書店 によった。ただし、漢字の字体は新しいものに改めた場合もある。

山のはの 霞むけしきに しるきかな けさよりやさは 春の曙

春が来たと、今朝、感じた。
曙の山に霞がかかっている景色に、春を感じとった。


 季節の推移は明らかなものではない。昨日まで冬で、今日からは春だとは言えないものだ。それでいながら、暦に沿って季節の変わり目を感じるし、天候や景色の変化によって新しい季節をとらえている。
 あいまいで緩やかな変化を複合して、ある時にフッと「春になった」と感じる。
 そういう感受の様が表現されていると思う。

 挽歌を続けて読むと、気持ちが重くなる。そこで、西行を読んでみた。気持ちが緩むようだ。現代の私も、同じ時刻、同じような景色に、春を感じる。不思議なものだ。