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家に来て 我が屋を見れば 玉床の 外に向きけり 妹が木枕
いえにきて わがやをみれば たまどこの よそにむきけり いもがこまくら


なきがらを葬って家に戻った。
家の中を見渡してもただひっそりしている。
見慣れた妻の枕がいつもと違う方を向いて、残されている。

 古代には亡き人の枕に魂がこもると信じられていた、という解説もある。現代でも遺品には物だけではない何かを感じる。現代人の感覚と万葉集の時代の人々との違いは、それほど大きくはないだろう。亡き人の身の回りの品々から、その人の在りし日が強く浮かび上ってくるのを抑えようとしても抑えられない作者の気持ちが伝わってくる。