事もなく 生きましもの を老いなみに かかる恋にも 我はあへるかも
こともなく いきましものを おいなみに かかるこいにも われはあえるかも

これまでは平凡で無難に生きてきました。
それが、いろいろと経験を積み、それなりの年齢になった今、こんなにも激しい恋心をもつとは思いませんでした。
それほどの思いで、あなたのことを恋しく思っているのですよ。

 この作に呼応している歌(563)と対で見ると、経験のある男女が互いに年齢を逆手にとって、駆け引きを楽しんでいるように感じられる。この作者は、次のように思ってこの歌を作ったと感じた。

 この年齢になると、よく使われる表現の仕方では、彼女に思いは通じないだろうなあ。それならいっそ年を取ったことを歌に詠みこんで、彼女の心を揺さぶってみよう。