与謝野晶子 『みだれ髪』 臙脂紫 より

ほととぎす嵯峨へは一里京へ三里水の清滝(きよたき)夜の明けやすき

<私が考えた歌の意味>
ほととぎすの鳴くのが聞こえる。
ここから嵯峨へは一里。
ここから京都へは三里。
ここは、清滝川の流れに沿う所。
もうすぐ夜も明ける。

<私の想像を加えた歌の意味>
清滝川の流れに沿うようにやってきました。
ここから名所嵯峨までは一里の所です。
京都の町中までは三里ほどあります。
ここは、静かで人通りも少ない所です。
ここで、ひっそりとあの人と一夜を過ごしました。
でも、もう夜明けがやってきます。
外では、ほととぎすが鳴いています。

<感想>
 三つの地名がしっくりと一首の中に入っている。古来、短歌の中の地名ほどイメージ豊かな語は、ないのではないか。

清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢う人みなうつくしき  与謝野晶子 みだれ髪

天離る 鄙の長道ゆ 恋ひ来れば 明石の門より 大和島見ゆ  柿本人麻呂 万葉集巻三 255

 時代の隔たったこの二首を味わっても、地名のもつ力が大きいことがわかる。