石川啄木『一握の砂』「煙」 より

それとなく
郷里(くに)のことなど語り出でて
秋の夜に焼く餅のにほひかな

<私が考えた歌の意味>
故郷でなにかあったわけでもないのに、話は故郷のことになる。
秋の夜、餅を焼くにおいが茶の間を満たす。

<歌の感想>
 会話を家族でのものとしてとらえてみた。だが、友人同士でもいいであろう。強い望郷の念に身を置くこともあれば、この作のように穏やかに故郷を思い出すこともある作者を感じる。