朝日新聞夕刊2018/7/11 あるきだす言葉たち 7・11アゲイン 熊谷 純(くまがい じゅん)

平日の街をゆき交ふ人たちの健全な目に射られてあせる

 平日の街は、働く人たちであふれている。まるで、自分だけが仕事を持たない人のようだ。
 忙しく動く街の活気、それに比べて、自分だけ時間を持て余している。それを、知っているかのように働いている人たちが、仕事のない私を見つめてくる。
 周囲から取り残されたような感覚にとらわれている作者が描かれている。
 ただ、「健全な目に」の句が気になる。これは、忙しそうに働いている人たちの目を「健全」と表現しているのだが、忙しく働いている人が健全なのだろうか。
 作者自身が、街の人たちからまるで非難されているように感じているのは伝わるが、忙しく働いている人たちの目を健全と括ってしまえるものだろうか。さらに、作者自身が、街を忙し気に歩いている人たちの目を、「健全な目」と感じているとは思えない。
 社会では、働き口のある人を健全な人と規定していると、作者は言いたかったのかもしれない。