与謝野晶子 『みだれ髪』 臙脂紫 より

わかき小指胡粉(をゆびごふん)をとくにまどひあり夕ぐれ寒き木蓮の花

<私が考えた歌の意味>
小指で白の顔料をといている。
さまざまにまどう心がわきあがる。
目をあげれば、夕ぐれのなか木蓮の花が咲いている。
白色をとく小指が若々しい。

<私の想像を加えた歌の意味>
純白を塗りたくて、白の顔料をとく。
顔料をとくが、描くことに集中できない。
想いは乱れ、まどう心が押し寄せる。
庭に目をやると、夕ぐれのなか木蓮が咲いている。
白の顔料の残像が木蓮の花の色に重なる。
我に返ると、白をとく小指が若い。
白の顔料も、木蓮の花も、私のまどう心と若い小指も夕闇に浮かぶ。

<歌の感想>
 「わかき小指」の表現が不思議だ。若い人とも、きれいな小指ともとれる。けれど、若さや指の美しさが、歌の焦点ではないと思う。
 年齢や身体の一部分のことではなく、晶子に見えているままという感じがする。そして、この表現は不思議ではあるが、短歌の中ではその場の様子にぴったりとそっていると感じる。