石川啄木『一握の砂』「煙」 より

茨島(ばらじま)の松のなみ木の街道を
我とゆきし少女(をとめ)
やすく暮らせり

<私の想像を加えた歌の意味>
茨島(ばらじま)の松のなみ木の街道をあの少女と歩いた。
どちらが誘ったと言うのでなく、互いに惹かれ合ったのだった。
人目を気にせずに、私と二人連れで歩くような少女だった。
だが、いつの間にか疎遠になっていった。
今は、家庭に入り、平穏に暮らしていると聞く。
私とともに歩いた少女は思い出の中だけにいる。

<歌の感想>
 若い頃の恋心の思い出と言えよう。それなのに、感傷的な気分は詠まれていない。思い出に浸ることなく、現在と過去を行き来している作者を感じる。