石川啄木『一握の砂』「煙」 より

蘇峰(そほう)の書われに薦(すす)めし友はやく
校をしりぞきぬ
貧しさのため

<私が考えた歌の意味>
徳富蘇峰の著作を、私に読むように薦めてくれた友人がいた。
その友人は、入学してほどなく学校を止めてしまった。
家が貧しく、学費が続かなかったと聞く。

<私の想像を加えた歌の意味>
蘇峰の本をぜひ読めと、熱心に私に薦めた友人だった。
権威に負けまいとする考えを持っていた友人だった。
彼が私に蘇峰の本を薦めたのは、私にも権力や権威に逆らう心を感じたからであろうか。
その彼が、早々と退学してしまった。
家が貧しくて学費が続かなかったのだ。
金に不自由なく、学生生活を楽しんでいた多くの友人よりも、退学をしたあの男が懐かしい。