石川啄木『一握の砂』「煙」 より

かぎりなき知識の慾に燃ゆる眼を
姉は傷(いた)みき
人恋ふるかと

<私が考えた歌の意味>
際限のない知識欲にかられて、燃えるように眼を輝かせていた。
その私の眼差しを、姉はひどく心配していた。
私が誰かに激しく恋しているのではないかと。

<歌の感想>
 家族の中でも、この姉とは特に気持ちが通じていたように思う。姉が自分のことを誤解して心配してくれたことを、姉への信愛を込めながら回想している。そして、その頃の啄木が、純粋な知識欲に満ちていたことをも懐かしんでいるのが感じられる。