万葉集 巻二 222 讃岐の挟岑(さみね)の島で、岩の間の死人を見て、柿本朝臣人麻呂が作った歌一首と短歌(220~222)

沖つ波 来寄する荒磯を しきたへの 枕とまきて 寝せる君かも
おきつなみ きよするありそを しきたえの まくらとまきて なせるきみかも

<私の想像を加えた歌の意味>
沖からの波が、岩ばかりの磯に打ち寄せている。
その磯の岩の合間に、死人が横たわっている。
名も知らぬあなた、葬られることなく、磯の岩を枕として漂っているしかなかったのか。

<歌の感想>
 見たままの事実を叙しているだけのようでありながら、それ以上のものが感じられる。
 旅の途上にあった人麻呂一行は、その死体を弔うような余裕はないのであろう。人麻呂もまた、その骸を見棄てていくしかない。それだけに、その死人への鎮魂の気持ちは増す。
 220~222までに、直接的な哀悼の表現はない。だが、磯に横たわる人よ、どんなにか寂しくこの世を去ったことでしょう、という人麻呂の同情と無常の念を感じる。