石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より 以前の記事を改めた。

大といふ字を百あまり
砂に書き
死ぬことをやめて帰り来れり

<私の想像を加えた歌の意味>
勤めを終えたが、すぐに家に帰る気になれない。
また、向かう先は、人影のなくなった海辺。
砂浜に腰を下ろす。
ほの暗い海に波音だけ。
砂の上で指を動かす。
「大」という字を書いていた。
「大きくなれ」「大きな心を持て」「大きな‥‥」、何度も何度も「大」を書く。
気持ちが軽くなって来る。
死ぬのは、いつでもやれる。
生きていこう。
妻の待つ家へと帰って来た。

<歌の感想>
 押しつぶされそうな状況からは、もがいてももがいても抜け出せなかった。悩み考えることを止め、砂浜で時間を過ごす。砂にただ「大」と書き続ける。
 「大」に特別な意味を見出しているのではない、と思う。思いつめるのではなく、ただ砂と触れ合うことが、死のうという気持ちを変えさせたことを感じる。