石川啄木『一握の砂』「煙」 より

教室の窓より遁(に)げて
ただ一人
かの城跡に寝にゆきしかな


<私の想像を加えた歌の意味>
もう講義を受けているのが嫌になった。
授業が退屈なのはいつものことだが。
今日は我慢ができないほどだ。
あの教師は追いかけて来はしまい。
窓から外へ出る。
生徒の皆は気づいているが、ただにやにやと傍観している。
どこへ行くという当てもない。
一人になりたかっただけだ。
あの城跡へ行こう。
城跡へ行って、草原で寝て来よう。
故郷の学生時代には、そんなこともあった。

<歌の感想>
 実に巧みな短歌だ。技巧も気負いもなく、三行にぴたりと収まっている。学校の退屈さと、作者の若々しい生命力と無鉄砲さが描かれている。それも、回想なので、より落ち着いて味わえるのであろう。