万葉集 巻二 193 日並皇子尊(草壁皇子)の宮の舎人たちが泣き悲しんで作った歌二十三首(171~193の内から)
はたこらが 夜昼とはず 行く道を われはことごと 宮道にぞする
はたこらが よるひるとわず いくみちを われはことごと みやじにぞする

<私の想像を加えた歌の意味>
この道は、身分の低い民たちが労役のために毎日通う道です。
その同じ道を、私たち舎人は毎日通います。
皇子様の仮の墓所をお守りするために。

<歌の感想>
 この短歌になると、皇子の死を悼む気持ちよりは、殯宮(あらきのみや)を守らなければならない舎人達の気持ちが前面に出ていると感じる。
 この二十三首(171~193)は、儀式的に死を悼むだけの作という感じがしない。頼りにすべき指導者を失った宮廷仕えの人々の悲哀も伝わって来て、注目すべき短歌群と思う。