石川啄木『一握の砂』「煙」 より

己(おの)が名をほのかに呼びて
涙せし
十四の春にかへる術(すべ)なし

<私が考えた歌の意味>
自分の名前を、小さく声に出してみる。
それだけで、涙が落ちる。
そんな多感な十四歳の自分にかえることはもうできない。

<歌の感想>
 十四歳の頃を思い出し、あの頃にはもう戻れないと感じることは多くの人にあると思う。
 この短歌の特徴は、若い頃を懐かしむというよりは、その十四歳の頃の思い出の描き方にある。理由や背景には触れずに、自分の名前を呼ぶという行為が描かれる。そして、その行為に「涙せし」がつながる。自分の名前を呼び、それだけのことに泣く、この感覚がなぜか伝わってくる。