万葉集 巻二 182 日並皇子尊(草壁皇子)の宮の舎人たちが泣き悲しんで作った歌二十三首(171~193の内から)
とぐら立て 飼ひし雁の子 巣立ちなば 真弓の岡に 飛び帰り来ね
とぐらたて かいしかりのこ すだちなば まゆみのおかに とびかえりこね

<私の想像を加えた歌の意味>
鳥小屋を建てて雁の雛を育てました。
雛が飛べるようになっても、皇子様にお見せすることはもうできません。
雁の子よ、巣立ったならば、皇子様の葬られている真弓の岡に飛び帰って来なさい。
亡き皇子様をお慰めするために。

<歌の感想>
 亡き人が手入れをしていた庭園や飼っていた動物が、その人を思い出させる。
 庭の草木にしても、愛玩動物にしても、人とは異なる命を持っている。人よりは、短く弱い命の草木や動物がいつもと変わらずにいるのに、その主人は亡くなった。その現実が、人の死を実感させる。