たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽(かろ)きに泣きて
三歩あゆまず


親と子と
はなればなれの心もて静かに対(むか)ふ
気まづきや何(な)ぞ

 
親子の関係は、時代の思潮に影響を受ける。だが、いつの時代も子の年齢が高くなれば、子が幼児の時のような一体感はなくなる。この二首は、子である作者は成人し、親は老人となっている。
 そうなると、②の短歌は、誰でもが経験する親子間を巧みに表現している。
 では、①はどうかというと、これもまた、親の老齢を実感した人にはおおいに共感できる感情だ。
 この二首の違いは、①が作者の心情を、作者の行動で表現している点だと思う。「泣きて」「三歩あゆまず」は、現実の体験としては受け入れがたい。親の老いに驚き、悲しく思った心情を詩の言葉として完成させていると感じる。
 ①は、よく知られた作品だが、②も味わい深い。