万葉集 巻二 177 178 179 日並皇子尊(草壁皇子)の宮の舎人たちが泣き悲しんで作った歌二十三首(171~193の内から)

177
朝日照る 佐田の岡辺に 群れ居つつ 我が泣く涙 やむ時もなし
あさひてる さだのおかへに むれいつつ わがなくなみだ やむときもなし

178
み立たしの 島を見る時 にはたづみ 流るる涙 止めそかねつる
みたたしの しまをみるとき にわたずみ ながるるなみだ とめそかねつる

179
橘の 島の宮には 飽かねかも 佐田の岡辺に 侍宿しに行く
たちばのの しまのみやには あかねかも さだのおかへに とのいしにいく

<私の想像を加えた歌の意味>
177
朝日が差す佐田の岡の周囲に、皇子様にお仕えした者たちが集まっています。
集まって来た者たちは、一様に泣き悲しんでいます。
集まっている私たちの心が慰められることはありません。

178
皇子様がお立ちになった庭園を見ています。
庭園は、皇子様がおいでなった頃と変わりがありません。
変わらぬ庭園を見ているだけで、私の涙は雨のように止まることなく流れます。

179
皇子様のいらっしゃらない島の宮に行くだけでは飽き足りないのでしょう。
皇子様に仕えていた者たちは、佐田の岡へと向かいます。
佐田の岡へ、今夜も宿直をしに行きます。