朝日新聞夕刊2017/6/21 あるきだす言葉たち 英雄 小島 一記(こじま かずき)

たまきわるAI独裁政権下ノートに物を書く罪あらん

 AIが社会の機構の隅々にまで浸透し、まるで独裁政権のように全ての意思決定をするようになれば、個人が個の考えを表現することさえも禁止されるようになるかもしれない、という作者の恐れが描かれている。
 これは、今、注目を集めている話題ではあるが、この作品で表現されていることは斬新な発想ではないと思う。
 発想や思考の新しさというよりは、表現方法の新しさが際立っている。「AI独裁政権下」という最新の事象に「たまきわる」という枕詞を冠している。さらに、上の句の重々しい感じに比べ、下の句には平易な言葉が使われている。この二つの対比が、AIを短歌で表現することを可能にしたのだと感じる。
 
 AIを支配の手段や隠れ蓑にして、大衆をコントロールしようとする独裁政権の出現こそ、警戒しなければならない。