万葉集 巻二 150 天皇が崩御された時に、婦人が作った歌一首 姓氏は分からない

うつせみし 神に堪へねば 離れ居て 朝嘆く君
うつせみし かみにあえねば はなれいて あさなげくきみ

離り居て 我が恋ふる君 玉ならば 手に巻き持ちて
さかりいて あがこうるきみ たまならば てにまきもちて

衣ならば 脱く時もなく 我が恋ふる 君そ昨夜 
きぬならば ぬくときもなく あがこうる きみそきぞのよ

夢に見えつる
ゆめにみえつる

<私の想像を加えた歌の意味>
亡くなった大君にお会いすることはできません。
この世では、もう二度とお会いすることができないと分かっていますが、いつもいつも大君を恋い慕っています。
昨夜は、大君が夢に出てこられました。

<歌の感想>
 現代語訳を参照すると、天皇の死をいかに表現しようかという表現方法に重きをおいてこの長歌を作っているように感じる。

「人の身は 神に逆らえないものだから 離れていて 朝からわたしが慕い嘆く大君(おおきみ) 残されて わたしが恋い慕う大君 玉だったら 手に巻きつけて持ち 衣だったら 脱ぐ時もないほどに いつもいつもわたしが恋慕う 大君がゆうべ 夢に見え給うた」日本古典文学全集 萬葉集 小学館

 現代の感覚では、この表現の仕方が亡き人を慕う気持ちをよく表わしているとは感じられない。