万葉集 巻二 149 天皇が崩御された時に、皇后が作られた歌一首

人はよし 思ひやむとも 玉かづら 影に見えつつ 忘らえぬかも
ひとはよし おもいやむとも たまかづら かげにみえつつ わすれえぬかも

<私の想像を加えた歌の意味>
今は、本当に多くの人々が亡き天皇を慕って、嘆き悲しんでいます。
天皇がどんなに慕われ、その死を惜しまれていても、年月には勝てません。
今は、嘆き悲しんでいる人々も、少しずつ亡き人のことを忘れていきます。
でも、私には、あのお方の面影がいつも見えています。
死を悲しむよりも、面影が見えながらお会いできないという気持ちのままです。

<歌の感想>
 現代語に訳するならば、率直で平明な一首になる。
「人はたとい 嘆きが止んでも、(玉葛)わたしは面影にちらついて 忘れられない」日本古典文学全集 萬葉集 小学館
 この率直さの中に、どんな悲しい死も時間ととも薄らぐことがまず示される。そうでありながらも、愛する人の死は時間によっても消えはしないことが詠まれている。これは、時代を超越した感覚だ。