朝日新聞夕刊2017/6/21 あるきだす言葉たち 英雄 小島 一記(こじま かずき)

誤りてメールソフトの立ち上がるつかの間青葉闇のため息

 「パソコン」「スマホ」と短縮した言い方は嫌いだ。短縮しないで書くと、次のようになる。
 パーソナルコンピューターかスマートフォンを使っている。今はそのつもりがなかったのに、電子メールソフトウェアーを立ち上げる操作をしてしまった。何秒かではあるが、ソフトウェアーが立ち上がるのを待ち、それを終了させなければならない。窓の外に目をやるとそこは青葉闇。物理的な時間の長さではなく、感覚的な時間の長さを感じて、ため息が出る。
 この短歌から思い浮かぶ情景は、上に書いた通りだ。だが、いくつかの語を短縮しないで略さないで書くと、それこそ「ため息」が出そうだ。今は、言葉も略さないと伝わりづらくなる場合もある。そんな現代の時間を感じる。