万葉集 巻二 148 一書に、近江天皇が御病気で危篤に陥られた時に、皇后が奉ったという御歌一首

青旗の 木幡の上を 通ふとは 目には見れども ただに逢はぬかも
あおはたの こはたのうえを かようとは めにはみれども ただにあわぬかも

<私の想像を加えた歌の意味>
木幡の山の上を天皇の御霊は行き来しているのが確かに感じられます。
天皇の魂は、身体の病に負けずに健やかなのです。
それなのに、お会いして元気なお姿を見ることはできないのです。

<歌の感想>
 天皇は危篤なので、魂が肉体から離れているのが見える、と解説しているものもあるが、そうなると、「ただに逢はぬかも」とのつながりがよくわからない。147とも関連させて、上のように考えてみたがどうであろうか。

 危篤に陥った人の肉体と魂についてのとらえ方は、現代でも様々である。そして、現代の人々のとらえ方は、魂の存在を信じる立場から全く存在を認めない立場まで非常に幅が広い。万葉人の認識は、現代ほどには幅が広くないように思う。