朝日新聞夕刊2017/5/31 あるきだす言葉たち 半袖の人長袖の人  小林 真代(こばやし まさよ)

昨夜の雨に湿つた町ですれちがふ半袖のひと長袖のひと

 七七五七七の音数なので、こんなに情景がすんなりと浮かぶのだろうか。
 例えば、無理に上の句を五七五にしてみると、当然ながら全く別の味わいになる。
昨夜降る雨に湿りし町であう半袖のひと長袖のひと
昨晩の雨に湿りし町を行く半袖のひと長袖のひと 

 
「湿つた町ですれちがふ」という散文的な表現が、効果を上げていると思う。このリズムと表現法がいかにも、今の町の風景を描いていると感じる。
 余計なことだが、最近の町の中は、老人の割合が多い。行き交う人々の年代差が大きいと、歩く速度も着ているものもその差が大きい。