万葉集 巻二 103 104 

103 天皇が藤原夫人に与えられた御歌一首

わが里に 大雪降れり 大原の 古りにし里に 降らまくはのち
わがさとに おおゆきふれり おおはらの ふりにしさとに ふらまくはのち

104 藤原夫人が答え奉った歌一首 

わが岡の 龗に言ひて 降らしめし 雪の嶊けし そこに散りなむ
わがおかの おかみにいいて ふらしめし ゆきのくだけし そこにちりなん

<私の想像を加えた歌の意味>
103
こちらでは、大雪が降りましたよ。
辺り一面美しい雪景色で、あなたにも見せたいものです。
あなたが里帰りしている大原の古都では雪はまだまだ降らないでしょうから。

104
何をおっしゃっているのですか。
私は、大原の岡の神に言って、こちらでもう雪を降らせましたよ。
そちらに降ったと自慢している雪こそ、大原に降った雪の残り物でしょうよ。


 短歌でのやり取りを楽しんでいる双方の気持ちが伝わってくる。
 103の方は、初雪を夫人と共に眺めたかったという気持ちがあり、104の方は、あなたと一緒に大原の雪景色を眺めたかったという気持ちがあるのだろう。それをそのまま表さずに、ひとひねりして贈答している。
 自慢とやせ我慢と受け取ることもできるのだろうが、それよりは表現上の技巧のおもしろさとユーモアのセンスを味わうべきだと思う。
 題材が初雪というのにも、暮らしの美意識と豊かさを感じる。