石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

誰が見ても
われをなつかしくなるごとき
長き手紙を書きたき夕(ゆふべ)

<私が考えた歌の意味>
日が暮れてきた。
故郷へ長い手紙を書きたいような気持だ。
その手紙を読む人は皆、私のことをなつかしく思い出す。
そんな手紙を書きたくなる夕だ。

<歌の感想>
 複雑な構成の作品だと思う。
 読む人の誰もが、作者のことを懐かしく思い出すような手紙を書くことはできないであろう。それどころか、故郷への手紙を書こうとすらしていないと思う。そんなあり得ないような手紙を書きたいと思うことがある、という自己を対象化して表現している。