石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

ぢつとして
黒はた赤のインク吸ひ
堅くかわける海綿を見る

<私が考えた歌の意味>
机の上の海綿を見ている。
海綿はじっとして、黒か赤のインクを吸ってきた。
インクを吸ってはいたが、今は乾いて堅くなっている。
動くに動けず、黒でも赤でもインクを吸い、そして乾いてしまった海綿。
その海綿を私は見ている。

<歌の感想>
  『一握の砂』には、l「しつとりと水を吸いたる海面の重さに似たる心地おぼゆる」がある。「ぢつとして」の方が、より沈んだ感じを受ける。
 日常を題材にした短歌において、作者の感情の起伏がなくなってきて、いつも沈んだ調子になっているように感じる。