万葉集 巻二 119 120 121 122 弓削皇子(ゆげのみこ)が紀皇女(きのひめみこ)を思って作った御歌四首
119
吉野川 行く瀬の早み しましくも 淀むことなく ありこせぬかも
よしのがわ ゆくせをはやみ しましくも よどむことなく ありこせぬかも

120
我妹子に 恋つつあらずは 秋萩の 咲きて散りぬる 花にあらましを
わぎもこに こいつつあらずは あきはぎの さきてちりぬる はなにあらましを

121
夕さらば 潮満ち来なむ 住吉の 浅鹿の浦に 玉藻刈りてな
ゆうさらば しおみちきなん すみのえの あさかのうらに たまもかりてな

122
大船の 泊つる泊りの たゆたひに 物思ひ痩せぬ 人の児ゆゑに
おおぶねの はつるとまりの たゆたいに ものもいやせぬ ひとのこゆえに

<私が考えた歌の意味>
119
吉野川の早瀬の流れは、一瞬も淀むことなく流れ下る。
私とあなたも、あの早瀬のように、どんな短い間も途切れることなく逢い続けたい。

120
愛しいあなたをいつもいつも恋しく思っている。
秋の萩は、パッと咲いてパッと散る。
こんな思いでいるくらいなら、秋の萩のように恋に燃え上がり、すぐに冷めてしまうほうがましだ。

121
夕暮れになれば、潮が満ちて来る。
今のうちに、浅鹿の浦で、藻を刈りましょう。
日が暮れる前に、浅鹿の浦で会いましょう。

122
停泊している大きな船が揺れている。
船の揺れるように、私の心も揺れ動き、悩んで痩せてしまった。
あなたのせいで。

<歌の感想>
 相手の紀皇女はどうも色よい返事をくれないように感じる。あるいは、作者の恋は言うほどには強いものではなく、歌の表現の工夫が先行しているのかもしれない。