万葉集 巻二 105 106 大津皇子が、ひそかに伊勢神宮に下って、都に帰った時に、大伯皇女が作られた歌二首
 
105
わが背子を 大和へ遣ると さ夜ふけて 暁露に 我が立ち濡れし
わがせこを やまとへやると さよふけて あかときつゆに わがたちぬれし

106
二人行けど 行き過ぎがたき 秋山を いかにか君が ひとり越ゆらむ
ふたりゆけど ゆきすぎがたき あきやまを いかにかきみが ひとりこゆらん

<私の想像を加えた歌の意味>
105
大和へと帰る我が君を見送りました。
我が君のこれから先を思うと心配でしょうがありません。
もう姿が見えなくなっても、夜露に濡れながら立ち尽くしていました。

106
二人で山越えをしても、心細くなる険しい秋山の路です。
我が君は、一人でそこを越えねばなりません。
今頃は、どんなにか心細い思いで山路を歩いていることでしょう。

<歌の感想>
 枕詞や譬えがなく、やり取りを楽しむ相聞とは違う趣の短歌だと思う。
 歌の背景の説明を参考にすると、作者大伯皇女が、大津皇子(大伯皇女が姉、大津皇子が弟)に二度と会えないかもしれないという気持ちが込められているとも考えられる。歴史的には確定はできないが、そのような背景があってもおかしくないと感じられる。