万葉集のかたわらにキーボード

記事は、原文に忠実な現代語訳や学問的な解釈ではありません。 私なりにとらえた歌の意味や、歌から思い浮かぶことを書いています。

2020年01月

万葉集 巻三 263 近江国から都に上って来た時に、刑部麻呂の作った歌一首

馬ないたく 打ちてな行きそ 日並べて 見ても我が行く 志賀にあらなくに
うまないたく うちてないきそ ひならべて みてもあがいく しがにあらなくに

<思い浮かぶ作者の気持ち>
 オイオイ、そんなに馬に鞭を入れるものじゃないよ。ここは、景色のよい志賀ではないか。ほんとうなら、志賀に一泊も二泊もして、ゆっくりとこの地を見て行きたいが、それは許されそうにないので、せめて、ゆっくりと馬を進めようではないか。

<歌に思うこと>
 旅に出ると、二種類の人がいると思う。観光旅行であっても、とにかく目的地優先で、途中の場所にはほとんど目もくれない人。他方、目的地や、名所にはあまり拘らず、旅そのものを楽しむ人。この二種の人は、互いを理解することは無理であろう。もちろん、この作者は、後者である。

万葉集 巻三 263 反歌一首

矢釣山 木立も見えず 降りまがふ 雪につどへる 朝楽しも
やつりやま こだちもみえず ふりまごう ゆきにつどえる あしたたのしも

 <思い浮かぶ情景>
 雪見の人々が集まってきた。今朝のやつりやまは、時折、山の木々も見えなくほど激しく雪が降ってくる。こんな朝に雪見に人々が集まるなんて、楽しいものだ。

<歌に思うこと>
 早朝の雪降りには興奮する。強く降る雪ならなおさらだ。
 時代を超え、人の年齢にも体調にも影響されず、雪に魅せられる。この作者がこういう実景の中にあるかどうかは、別として、情景も気持ちも伝わってくる。
 人だけでなく、犬も雪降りを喜ぶ。わが愛犬は、今朝の吹雪(2020/1/21札幌市)に大興奮だ。

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