巻三 236 天皇が志斐の嫗に遣わされた御歌一首

否と言へど 強ふる志斐のが 強ひ語り このころ聞かずて 朕恋ひにけり
いなといえど しうるしいのが しいかたり このころきかずて あれこいにけり

<私の想像を加えた歌の意味>
何回も聞かされて、もう聞くのも飽きてしまった志斐の婆さんの話をこの頃は聞くことがなくなってしまった。
私は政務に忙しく、また、婆さんは老いてしまったのだろう。
何度も聞いた話だが、久しぶりに婆さんのあの話を聞いてみたくなった。

<歌の感想>
 次の237との掛け合いのおもしろみが主眼なのだろう。
 どのような「語り」で、天皇と「志斐の嫗」がどのような関係なのかは、想像するしかないが、なんとなくその場の様子が伝わって来るような短歌だ。