石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

垢じみし袷(あはせ)の襟よ
かなしくも
ふるさとの胡桃(くるみ)焼くるにほひす

<私が考えた歌の意味>
垢に汚れた袷の襟の匂いが、故郷でくるみを焼いた匂いと重なった。
汚れた袷の匂いから、ふるさとを思い出すなんて、かなしいことだ。

<歌の感想>
 日常の臭覚の連想が表現されている。「かなしくも」からは、今の生活は貧しいし、故郷にも良い思い出は少なかったという作者の思いが伝わってくる。「かなしい」という語が強い感情ではなく、感傷的な雰囲気を生み出していると思う。