石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

ある朝のかなしき夢のさめぎはに
鼻に入り来(き)し
味噌を煮る香(か)よ

<私が考えた歌の意味>
ある朝の悲しい夢のさめぎわのことだった。
夢から覚めるか覚めないかのときに、香りを感じた。
味噌を煮る香りだった。

<私の想像を加えた歌の意味>
悲しい夢の覚め際に感じたのは味噌汁の香りだった。
そういう朝があった。
あの時の味噌を煮る香りが今でも残っている。

<歌の感想>
 悲しい夢から覚めてホッとしているのでも、朝食が準備されていることに心を満たされたというのでもない。また、今日も平凡な一日が始まるという倦怠感を表現しているのでもあるまい。
 「ある朝」の「香」が印象に残っているだけなのであろう。感情や気分から切り離された感覚が描かれている。