石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

とある日に
酒をのみたくてならぬごとく
今日われ切(せち)に金(かね)を欲(ほ)りせり

<私が考えた歌の意味>
ある日、酒を飲みたくてたまらなくなったことがある。
その日と同じように、今日の私は金が欲しくてたまらない。

<私の想像を加えた歌の意味>
どうしても我慢がならないほど酒が飲みたくなる日があった。
その時は、暮らしに必要な金にも手をつけて酒を買い、酔い潰れた。
あの日とまるで同じように、今日の私は金だけが欲しい。
どんな恥ずかしいことをしても、何を手放してもいいから、切実に金が欲しいのだ。

<歌の感想>
 この歌集の今までの作で、酒のことは出てきていない。啄木に、酒好きをうかがわせるものは感じられない。また、今食うに困っていることを詠んでいるのでもない気がする。
 「今日のわれ」は、他のどんなことよりも、金が欲しいと言っている。いつもの作者は、何よりも金が欲しいとは思っていないが、今日は金が何よりも優先する、ということなのであろう。金銭的に苦しい生活が続いていること、生活が行き詰っていることを感じる。