万葉集 巻一 58 高市連黒人

いづくにか 船泊てすらむ 阿礼の崎 漕ぎたみ行きし 棚なし小舟
いずくにか ふなはてすらん あれのさき こぎたみいきし たななしおぶね

<私の想像を加えた歌の意味>
小舟が、阿礼の崎を巡っているのが見えていた。
阿礼の崎の風景を楽しみながら、漕いでいたようだ。
今は、舟も見えず、いつも通りの海だ。
あの小舟は、今頃どこに泊まっているのだろう。

 以前の記事では、いろいろな想像をしてみた。しかし、改めて歌を味わうと、余計な想像は余計でしかなかった。  
 長い航路を行くには、頼りないような小舟の動きを眺めていた。その小舟は視界から消えたが、なんとなく、気になっている。
 舟が見えていたときの景色、舟が見えなくなった今の景色、その両方を思い描くことができる。

 好きな短歌は、作者に注目して選びはしなかった。額田王や柿本人麻呂の短歌が入って来るのは当然のような気がするが、高市連黒人の作を二首選ぶとは、自分でも意外だ。好みに一致するのだろう。